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: 補正フラックスの問題(2): 多次元への拡張性 : いくつかの問題 : 応用性   目次

補正フラックスの問題(1): clipping

Boris and Book(1973) で与えられた補正フラックスは([*])$\sim $ (12)式で与えられる. 先に解説したようにこれは 新たに正負の極値を作ったり, すでに存在する極値をさらに強めないよう な工夫がなされている.

しかしこの工夫が災いして, 本当はピークを持つような分布が保存されな いという欠点が生じてしまう. これは ``clipping'' と呼ばれている. 具体的にFig.5を見ながら考えることにする. 簡単のため速度 は 0 とし数値拡散だけを考慮する. 最初に(a)のような分布であったとす ると拡散のため(b)のようになる. これに対して(10)$\sim $ (12)を基に補正フラックスを与えても, $i$ 点に存在したピー クは再現されない. 一方 $i-1$, $i+1$ 点での値は補正を受けるので $i$ 点の値に次第に近付く. やがて3点はほぼ同じ値をとるようになる ((c)). こうなると拡散も補正も効かなくなってしまいこの状態が維持さ れ, あたかも当初存在した山をはさみで切り取ってしまったかのようにな る.

この問題は補正フラックスを決める際に1ステップ前の $\Delta _
{i-\frac{1}{2}}, \Delta _{i+\frac{1}{2}}$ を参照することである程度 解消されるが, 基本的には回避できない. しかし鋭いピークを持つような 成分が重要かどうかは計算の対象となる現象に依存するので, clipping が問題とならない場合もある.

図 5: ``clipping'' の模式図(Book et al.(1973),図7を基に作成)
\begin{figure}\begin{center}
\Depsf[][]{ps-fig/fig5.ps}
\end{center} \end{figure}



odakker 平成18年2月13日