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惑星の気象学


砂の惑星大気の循環: 大ダストストーム

図10: ハッブル宇宙望遠鏡によって撮影された大ダストストーム前後の火星. (左) 2001 年 6 月 26 日 (右) 2002 年 9 月 4 日 [ ハッブル宇宙望遠鏡写真集 より取得].
 
図11: マーズグローバルサーベイヤーによって観測された, 大ダストストーム発生時の鉛直積分したダスト量の変化. 2001 年 6 月 17 日 から 7 月 28 日までの 1 日毎 [ MGS/TES ホームページ より取得].
 

図 10 はハッブル宇宙望遠鏡で観測された火星の大ダストストーム前後の様子である. 大ダストストーム時には大気中のダストによって地表を直接見ることはできない. 大ダストストームが発生してから地表面が見える程度にダストが減少するまでの時間はおよそ 3 ヵ月である.

大ダストストームの発生メカニズムはよくわかっていない. これまでに以下のような説が提案されているが, いずれも決定的なものではない. 大気大循環モデルでは地表からのダストの巻き上げを自然に再現することができないため, 現時点で大ダストストームを予報することは困難である.

  • 台風モデル:
    水蒸気の代わりにダストの加熱で駆動される渦 (台風) を考える.

  • ハドレー循環の遷移:
    ハドレー循環の上昇域が夏極へずれることで, ハドレー循環の風を強める.

  • 大規模大気波動:
    昼夜の加熱差によって生じる風 (熱潮汐波) でダストストームを起こす.

  • ハドレー循環 + 大気波動:
    ハドレー循環にともなう風に熱潮汐波の風を重ね合わせることで, ダストストームを起こす.


最終更新日: 2002/09/04 小高 正嗣 (odakker@gfd-dennou.org)
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