/森羅万象学校 /2004-03-04/

エネルギーバランスモデルを用いた
全球凍結状態の記述

石渡正樹(北大・地球環境) momoko@ees.hokudai.ac.jp
2004 年 3 月 5 日
タイトル


全球凍結現象の歴史
  • 原生代の後期に地球は氷漬けに.
  • エネルギーバランスモデルによる議論
  • 三次元モデルにおける議論


0 次元モデルによる多重平衡解
  • 0次元モデル: (1-A)F=σT4
    • 太陽放射による加熱と惑星放射が釣り合うモデル


一次元モデルの定式化
  • 入射量の南北分布も考えるエネルギーバランスモデル
  • 地表面温度: Ts を求める.
  • 太陽からの入射: S は緯度変化する
  • 長波放射は温度の線型関数: a+bTs
    • 「多分テイラー展開して線型近似じゃないですか?」byはしもと
  • 南北熱輸送は: γ(T-Ts)
  • 平均温度は毎ステップごとに計算しなおす


Budyko モデルの結果
  • 現在の地球の条件で計算すると、平衡解は3つ(ひとつは不安定)
  • 太陽定数が低いと平衡解として全球凍結しか存在しない.


Budyko モデルの問題点
  • 長波放射に射出限界が無い.


エネルギーバランスモデルについて再考察
  • 放射の部分はちゃんと解きましょう, ということ.
    • 放射として灰色大気
    • 入射太陽放射は地球の年平均
    • 拡散係数は GCM にあうように決める
    • 南北熱輸送は Budyko 型と拡散型の二つの場合について.


EBM 再考察の結果(1) 南北熱輸送がBudyko モデルのままの場合
  • 赤丸(暴走温室状態)は太陽定数の低いところまで伸びている.
  • 現在の地球から, 一度全球凍結へ行くと…
    • 全球凍結から脱却するには太陽定数を 1800 ぐらいまで上げなきゃダメ
    • すると暴走温室状態へ飛ぶ
    • 結果として, Budyko モデルは全球凍結と暴走温室を繰り返す.


EBM 再考察の結果(1)南北熱輸送が拡散型モデルの場合
  • 氷境界緯度の分岐はあまり変化が無い.
    • Budyko 型と同様
  • 地表面温度の分布を見ると, 分岐がちょっと変!?


灰色大気 EBM における解のつながり
  • 左上、左下のパネルは、平衡解だけが描かれている
  • 赤点は右のパネルと左のパネルで意味が違うことに注意


二種類の氷無し平衡解
  • 左: 計算に使った惑星放射
  • 右: 太陽定数と氷線緯度
    • 山があるので、その近傍で2重解を持つ


まとめ:
  • EBM の結果では長波放射の与え方にあまり依存しない.
  • 暴走温室状態には結構小さい太陽定数でも発生する.


参考文献
  • Baum, S. K., and T. J. Crowley, 2001: GCM response to Late Precambrian (~590 Ma) ice-covered continents. Geophys. Res. Lett., 28, 583-586.
  • Budyko, M. I., 1969: The effect of solar radiation variations on the climate of the Earth. Tellus, 21, 611-619.
  • Hoffman, P. F., A. J. Kaufman, G. P. Halverson, and D. P. Schrag, 1998: A Neoproterozoic snowball Earth. Science, 281, 1342-1346.
  • Hyde, W. T., T. J. Crowley, S. K. Baum, and W. R. Peltier, 2000: Neoproterozoic `snowball Earth' simulations with a coupled climate/ice-sheet model. Nature, 405, 425-429.
  • Ikeda T., and E. Tajika 1999: A study of the energy balance climate model with CO2-dependent outgoing radiation implication for the glaciation during the Cenozoic. Gephys. Res. Lett., 26, 349-352.
  • Jenkins, G. S., and S. R. Smith, 1999: GCM simulations of Snowball Earth conditions during the late Proterozoic. Geophys. Res. Lett., 26, 2263-2266.
  • Poulsen, C. J., R. T. Pierrehumbert, and R. L. Jacob, 2001: Impact of ocean dynamics on the simulation of the Neoproterozoic "snowball Earth". Geophys. Res. Lett., 28, 1575-1578.
  • Sellers, W. D., 1969: A global climatic model based on the energy balace of the Earth-atmosphere system. J. Appl. Meteor., 8, 392-400.
  • Wetherald, R. T., and S. Manabe, 1975: The effects of changing the solar constant on the climate of a general circulation model. J. Atmos. Sci., 32, 2044-2059.

佐々木洋平, 千秋博紀, 小高正嗣(2004-04-02)© 森羅万象学校企画グループ