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6. 放射

6.1 はじめに

放射過程としては 太陽から射出された短波放射と地球において射出された長波放射とに分けてと り扱う.

6.2 入射放射

この節では大気上端における中心星(太陽系惑星の場合は太陽) からの入射放射を与える式についての解説をおこなう.

6.2.1 入射フラックス分布

大気上端における入射放射フラックスの分布の式を書きくだす.

入射フラックス $ F_S^I$ は, 太陽定数を $ S_0$, 太陽地球間の距離の, その時間平均値との比を $ r_S$, 入射角を $ \zeta$ とすると,

$\displaystyle F_S^I (\lambda, \varphi)= - S_0 r_S^{-2} \cos \zeta .$ (6.1)

$ \zeta$ は次の式で与えられる.

$\displaystyle \cos \zeta = \cos \varphi \cos \delta_S \cos H + \sin \varphi \sin \delta_S$ (6.2)

$ \delta_S$ は太陽の赤経, $ H$は時角(地方時から $ \pi$ を引いたもの)である.

6.2.2 年平均日射の場合

年平均入射量および年平均入射角は, 近似的に, 次のようになる.

$\displaystyle \overline{F_S^I} (\varphi) \simeq - S_0 ( A_{ins} + B_{ins} \cos^2 \varphi ) ,$ (6.3)

$\displaystyle \overline{\cos \zeta} \simeq A_{\zeta} + B_{\zeta} \cos^2 \varphi .$ (6.4)

大気上端におけるアルベド $ \mathcal{A}$ を考慮すると

$\displaystyle \overline{F_S^I} (\varphi) \simeq - S_0 (1 - \mathcal{A})( A_{ins} + B_{ins} \cos^2 \varphi )$ (6.5)

となる. また, モデルで使用する場合 $ \overline{\cos \zeta}$ よりも $ \overline{\sec \zeta}$ の方が 便利である. 6.1 $ \overline{\sec \zeta}$ の式は
$\displaystyle \overline{\sec \zeta} \simeq \frac{1}{A_{\zeta} + B_{\zeta} \cos^2 \varphi} .$     (6.6)

$ A_{ins}$, $ B_{ins}$, $ A_{\zeta }$, $ B_{\zeta }$ の値 を Table 6.1 に示す.


表 6.1: 各惑星における $ A_{ins}$, $ B_{ins}$, $ A_{\zeta }$, $ B_{\zeta }$ の値
惑星名 $ A_{ins}$ $ B_{ins}$ $ A_{\zeta }$ $ B_{\zeta }$
地球 0.127 0.183 0.410 0.590
Ains


6.2.3 同期回転惑星の場合の入射フラックス

$ \delta$ を外から与える. これは太陽直下点の緯度. 次に太陽直下点の経度(degree) $ \lambda_{subsolar}$ を与える. これにより時角は

$\displaystyle H = \lambda - \lambda_{subsolar} * \frac{180}{\pi}$     (6.7)

となる.
$\displaystyle \cos \zeta = \sin \varphi \sin \delta
+ \cos \varphi \cdot \sqrt{1 - \sin^2 \delta} \cdot
\cos H$     (6.8)

入射フラックス分布は
$\displaystyle F_S^I (\lambda, \varphi) = - S_0 (1 - \mathcal{A}) \cos \zeta$     (6.9)

6.3 短波放射

6.3.1 短波放射フラックス

短波放射過程においては, 水蒸気とそれ以外の大気による吸収のみを考慮し 多重散乱は考慮しない. 吸収係数の異なった$ N_S$個の波長帯を 考える(k-distribution method). $ F_S$は,

$\displaystyle F_S(z)$ $\displaystyle =$ $\displaystyle \sum_i^{N_S} a_i
\left[
(1-\alpha_A) F_S^I
\exp \left( - \tau_{S,i}(z) \sec \zeta \right)
\right.$  
    $\displaystyle \left. - \alpha_g (1-\alpha_A) F_S^I
\exp \left( - \tau_{S,i}(0) ...
... \right)
\exp \left( - ( \tau_{S,i}(0)-\tau_i(z) ) \sec \zeta_0 \right)
\right]$ (6.10)

ここで, $ F_S^I$ は大気上端からの入射, $ \zeta$ は入射角, $ \zeta_0$ は散乱光の相当入射角で, $ \sec \zeta_0 = 1.66$ とする. $ \alpha_A$ は大気の散乱によるアルベドであり, 一定値を与える. $ \alpha_g$ は地表面のアルベドである.

$ \tau_{S,i}(z)$は, 大気上端を0とした光学的厚さであり,

$\displaystyle \tau_{S,i}(z) = \int_z^\infty k_{S,i} \rho q dz + \int_z^\infty \bar{k}_{S,i} \rho dz$ (6.11)

$ k_{S,i}$ は波長帯 $ i$ の水蒸気に対する吸収係数, $ \bar{k}_{S,i}$ は波長帯 $ i$ の水蒸気以外の大気に対する吸収係数である. これら吸収係数は$ z$等に依存しない一定値を与える. $ a_i$ は波長帯 $ i$ の放射エネルギーの全体に対する割合である.

地表面での吸収は,

$\displaystyle F_S(0) = \sum_i^{N_S} a_i (1-\alpha_g) (1-\alpha_A) F_S^I \exp ( - \tau_{S,i}(0)\sec \zeta ) ,$ (6.12)

で与えられる.

6.4 長波放射

長波放射過程においては, 水蒸気とそれ以外の大気による吸収と射出のみを考慮する. 吸収係数の異なった$ N_R$個の波長帯を 考える(k-distribution method). $ F_R$は,

$\displaystyle F_R(z) = \left( \pi B(T_g) - \pi B(T_s) \right) {\cal T}^f(z,0) +...
...(z_T)) {\cal T}^f(z,z_T) - \int_0^{z_T} \DD{\pi B}{\xi} {\cal T}^f(z,\xi) d \xi$ (6.13)

ここで, $ {\cal T}^f(z_1,z_2)$は, $ z=z_1,z_2$ 間のフラックス透過関数, $ \pi B \equiv \sigma_{SB} T^4$ は放射源関数である.

フラックス透過関数, $ {\cal T}^f(z_1,z_2)$は,

$\displaystyle {\cal T}^f(z_1,z_2) = \sum_{i=1}^{N_R} b_i \exp \left( - \delta_R \vert \tau_{R,i}(z_1) - \tau_{R,i}(z_2) \vert \right)$ (6.14)

$ \tau_i(z)$は, 大気上端を0とした光学的厚さであり,

$\displaystyle \tau_{R,i}(z) = \int_z^\infty k_{R,i} \rho q dz + \int_z^\infty \bar{k}_{R,i} \rho dz$ (6.15)

$ k_{R,i}$ は波長帯 $ i$ の水蒸気に対する吸収係数, $ \bar{k}_{R,i}$ は波長帯 $ i$ の水蒸気以外の大気に対する吸収係数である. これら吸収係数は$ z$等に依存しない一定値を与える. $ b_i$ は波長帯 $ i$ の放射エネルギーの全体に対する割合であり, 一定値をとると近似する. また, $ \delta_R = 1.5$ を用いる.



... 便利である.6.1
(2007-05-23 石渡) なんでだっけ?

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: 7. 地表面過程 : dcpam4 支配方程式系とその離散化 : 5. 大規模凝結
Yasuhiro MORIKAWA 平成20年6月25日